総合講座: 科学概論 I (1996 年度 春学期)
講義内容と日程
4/8 青木 健一郎 (経済学部・日吉物理学教室)
ガイダンス:
日程・内容・評価の仕方
4/15, 4/22, 5/13 小沼 通二 (Pugwash 会議評議員,
アジア太平洋物理学会連合会長,慶應義塾大学名誉教授)
現代物理と平和問題:
20 世紀に物理は革新的な発展を遂げたがその成果は核兵器などの最新
兵器にも利用されてきた.科学者,また科学者以外の人間はこれにどの
ように対応していくべきであろうか?
5/27, 6/3, 6/10 小柳 義夫 (東京大学大学院理学系研究科
情報科学)
ネットワーク社会の構造とその問題
- 現在のコンピューター技術の概観を説明する.
- Internet とは何か,いかにして発展してきたのか,といった点を
解説する.
- 現在世界はネットワークを通じて急速につながりつつある.
ネットワーク社会の抱える問題について考える.
5/20, 6/17, 6/24 青木 健一郎 (経済学部・日吉物理学教室)
- ネットワーク社会における科学研究:
ネットワーク,特にインター
ネットがいかに最前線の研究方法に採り入れ
られているかを物理学を一例にとって説明する.
- 知的財産であるソフトウエアの保護:
特に最近問題となっているソフトウエアの特許とインターフェースの
著作権について考える.ソフトウエアの保護が必要なのは当然である
が,どこまでが妥当であり,どこからが行き過ぎであるのであろうか?
更に, 長期的には現在行なわれているような閉鎖的なソフトウエア開
発ではたして良いのかという問題がある.もっとソフトウエアの資産
を皆で共有できないのか,といった点を具体例を通じて考える.
上記どの問題にも現在のところ解答はない.だからこそ将来を担う学
生諸君に考えてもらいたい問題である.
7/1, 7/8 古野 泰二 (医学部・日吉物理学教室)
現在の Imaging Technology: タンパク質を見る
現代の生物科学は急速な進歩をし続けており,21世紀は脳科学の時代だ
ともいわれている.物理学及び工学技術の支援のもとに,年月をかけて
改良発明されてきた種々の計測装置が生物科学においても利用され活躍
している. 本講義においては,これら生物科学の研究で使われる装置
のうち,生物構造,特に生体における超微小マシンであるタンパク質の
形状や構造を解析するための各種顕微鏡法を中心に,手法及び最新の研
究データをもとに解説し,タンパク質研究の最前線の一部を紹介したい.
参考書
青木 健一郎担当分
- 今野 浩
「カーマーカー特許とソフトウエア」
中公新書
ソフトウエア特許の是非をカーマーカー特許という最近の事例を
取って一研究者/エンジニヤの立場から考えた本.平易でユーモア
もあり読みやすい.
- 根岸 哲 編 「コンピュータ知的財産権」
東京布井出版
ソフトウエア知的財産権を諸国の法例,判例などに基づいて比較
主に法的側面から考察した本.財団法人比較法研究センターの
主催した共同研究の成果.是非よりも現状把握.(1993年出
版)
- 豊田正雄 「ソフトウエアと特許権」
ダイヤモンド社
ソフトウエア特許は現実のもんだからどんな物か理解して利用し
ようぜ,という,元特許庁審査官が書いた本.実用面を考慮に入
れながらソフトウエアの知的財産権 (著作権,特許権) を説明し
ている.
- 1994年アメリカ合州国特許商標局 (USPTO = United
States Patent and Trademark Office) はソフトウエア特許の現
状に問題があるという認識の下で San Jose において公聴会
を開いた.そこにおける
業界の声
は賛否両論で興味深い.
会社が大きいほど,トップに経営屋がいて特許に賛成で,中小の
光る企業はトップがエンジニヤ(上がり)で反対という一般的パター
ンが私には見受けられるがどうであろうか.
- LPF (League for
Programming Freedom) はソフトウエアの特許とインターフェー
スの著作権に反対するソフトウエアエンジニアたち(主に)の組織
である.現場のソフト開発者の間ではソフトウエア特許は廃止し
た方が良いという声が2対1以上で強いという統計もある.
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Last modified: Tue Aug 20 15:59:32 JST 1996